悪 狐
混乱
体調を維持し、無事に迎えた放課後。
教室の窓から見えたのは、あの時の女の人。
歩いて行く先には保健室がある。
目的地は他の場所なのだろうけど、彼女を保月先生が見つけたら、きっと声をかけるだろう。
私には向けない笑顔で。
「お。慶子(けいこ)さん、温室に行くのかな。」
声と同時。
身近に居た大内先生に気付いて驚く。
気配が全く感じられなかった。
それほど私は無心で彼女を見ていたのかな。
「大内先生、あの女性を知っているんですか?」
私の質問に、大内先生は何かを考えてから無言の笑み。
知りたい理由が保月先生に関係するのだと、先生には読まれたような気がする。
だとすると。慶子さんと保月先生は知り合いで、大内先生の知る仲。
どれ程の付き合いなのかは分からないけれど。
この答えは得られないような気がして、視線を机に置いた自分の荷物に向けた。
「ふふ。聞いていながら、冷たい反応をするのは大人びたようで、とても可愛いな。知りたいよね、本当は。」
大内先生は私の手を引き、距離を縮めて見下ろす。
意地悪な眼。
普段とは違う先生の雰囲気。