悪 狐

「連れて行け。邪魔だ。」

冷たい言葉は、低音で響く。

手を引かれ、足取りは不安定ながら保健室を後にした。
感情が冷めたように、体も冷たくなったような寒さ。

「大内先生、いつから居たんですか?」

何かを考えていないと、そのまま闇に落ちてしまいそうな程、頭に浮かぶのは良くない事ばかり。

「どの時点でもアウトかな。」

私が保健室に向かったのを知っていたなら、担任として様子を見に来ていても不思議ではない。

最初からかな。どの時点でも会話的にはアウト。
それは生徒と教師との間で、あってはならない事。

「煽ったのは私です。」

足を止め、繋いだ手を引き戻す。
視線は冷たい廊下を見つめ、大内先生の目を見ることが出来なかった。

一時。

ため息を吐いたのが分かって、自分の情けなさに体身が固くなる。
そんな私の頭に、そっと手を乗せて。

「何故、そんなに委縮してるの?もっと力を抜きなよ、君は悪くないんだから。」

私は悪くない?本当に?
顔を上げ、みんなに向ける時の笑顔と変わらないのを見て、私は力が抜けた。

正当化せず、私は自分の過ちを素直に認めて。


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