悪 狐
「君のお母さんから聞いてない?酷いよ、僕を捨てて逃げるなんて……君とも会わせないとか。教育に良くないとか……ぐすん。」
あぁ、うん。
私のお母さんは、こんなおじ様を見捨てられなかったみたいだからね。
私でも逃げたくなるのが分かるよ。
「……俺、母さんが強がって嘘を吐いてるんだと、ずっと……」
そうだろうね。何となく、そうじゃないかと思っていた。
おじ様は恨まれるような人じゃない。
多分、このきっかけを作ったのは大内先生だろうな。
私の淡い恋も終わりを告げる。
真実を知った保月先生は、憎しみなど無意味だと分かったはずだから。
どうやって収集がついたのかも曖昧な時間。
保月先生の感情は、どんな風に処理されるのかな。
……後日。
「お前、知っていたのか?」
書類の確認の為、再び保健室を訪れた私に先生は怒りの表情で詰め寄る。
「知らないけれど、大きな溝があるのかと思っていたわ。だってアレだもの。それに、私は知らないと最初に言ったよね?」
日時の記入された記録ノートを見ながら、私は淡々と答える。
「……ごめん。俺が悪かった。」