悪 狐

素直に謝るんだね、何か可愛い。
私は目を上げて、先生に視線を向けた。

「何が?」

優位な私に言い返せないのか、拗ねたような態度。
そして会話を逸らすような意地悪な声。

「なぁ。お前、俺の事を好きだろ?」

いきなりの図星に、今度は私が口を閉ざす。

「ん?素直になれよ。」

「先生には、仲の良い慶子先輩がいるじゃない。」

私は視線を真っ直ぐ向けたまま、にっこりと笑ってみせる。

「可愛くないなぁ、帆夏(ほのか)。正直に言えよ、保健室に来なかった理由は嫉妬だろ?」

私の名前を気安く呼んで、優位を奪っていく。汚い大人。
素直になんてなれない。

「穏やかな時間を邪魔しちゃ悪いと思ったわ。誰かさんが、私を通しておじ様に復讐してたから。」

睨んだ私に、保月先生は苦笑を見せる。
穏やかな声。

「悪かったって。それに、嫉妬していたのは俺だよ。」

保月先生の言葉が一瞬、理解できずに首を傾げる。

「先生が嫉妬?おじ様と私の仲に?」

意味が分からず疑問が一杯。
そんな私の頬に手を当て、顔を近づけて唇を重ねた。

今までと違う優しい触れ方。
見開いた目に入るのは。


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