悪 狐
私は首を振って、無理に笑って見せた。
「ありがとう。もう少しすると、落ち着くと思うから大丈夫。」
クラスが同じで、優しく声をかけてくれる女の子達が居るけれど、どこか線を引いてしまう。
孤独は嫌いなのに、孤立する自分が矛盾を生み出していく。
足を動かして歩き始めるけれど、後ろ髪を引かれる様に心が取り残される。
あの女性は誰だろうか。
保月先生の笑顔。
心許したような屈託のない、私には見せない表情。
悔しい。
出逢ったすぐに、私を心配して見せた表情が思い浮かんで、胸を熱くする。
もう二度と見られないかもしれない。
私に向けられるのは憎しみと、憂いの伴う視線や乱暴な言葉。
だけど。優しいのを知っている。
触れる手は…………
「馬鹿か、お前。」
ぼやけた視界に、乱暴な言葉。
保月先生の声だよね、どうして?
「まぁ落ち着けよ、柚瑠(ゆずる)。相変わらず、オヤジさんの事になると大人げないなぁ。」
「てめぇ。」
大内先生も、いつもと雰囲気が違う。
それに。
やっぱり、おじ様の件が。
「ごめんなさい、私……」
身を起こそうとすると、激しい頭痛。