悪 狐

私は首を振って、無理に笑って見せた。

「ありがとう。もう少しすると、落ち着くと思うから大丈夫。」

クラスが同じで、優しく声をかけてくれる女の子達が居るけれど、どこか線を引いてしまう。
孤独は嫌いなのに、孤立する自分が矛盾を生み出していく。

足を動かして歩き始めるけれど、後ろ髪を引かれる様に心が取り残される。
あの女性は誰だろうか。

保月先生の笑顔。
心許したような屈託のない、私には見せない表情。

悔しい。
出逢ったすぐに、私を心配して見せた表情が思い浮かんで、胸を熱くする。

もう二度と見られないかもしれない。
私に向けられるのは憎しみと、憂いの伴う視線や乱暴な言葉。

だけど。優しいのを知っている。
触れる手は…………



「馬鹿か、お前。」

ぼやけた視界に、乱暴な言葉。
保月先生の声だよね、どうして?

「まぁ落ち着けよ、柚瑠(ゆずる)。相変わらず、オヤジさんの事になると大人げないなぁ。」

「てめぇ。」

大内先生も、いつもと雰囲気が違う。

それに。
やっぱり、おじ様の件が。

「ごめんなさい、私……」

身を起こそうとすると、激しい頭痛。


< 7 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop