悪 狐

額に冷たい手が触れて、押し戻す力に導かれる様に体が布団に沈んだ。

「本当の馬鹿だな、寝てろ。」

言葉は冷たく、ため息を吐いているけれど。
先生の視線には、私を心配しているような優しさが見える。

弱った自分が見ている夢なのか、願望なのか。

「柚瑠、寝かせたところ悪いけど。」

そう言いながら、大内先生が私を抱える。
優しく持ち上げたからか、頭の痛みは感じないけれど、お姫様抱っこに茫然としてしまう。

「お前、一体……何を。」

保月先生も何が起こったのか、理解できないような戸惑いの表情。

「ふっ。保護者が迎えに来たと、連絡が入ったんだ。俺はここに呼んでも構わないが。お前が困るよな?」

見上げて目に映る表情は、とても意地悪。
二人は仲が良いのか悪いのか分からない。

「さっさと連れて行けよ。」

保月先生は私たちに背を向け、作業に移る。

「じゃぁ、行こうか。お父さんが車で迎えに来たみたいだよ。君は……大事に、されているんだね。」

私は。
『大事に』されなかったのかな、何があったのか私には分からない事。

だけど。
頭より胸に、刺さる様な痛み。


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