悪 狐
恋心
「先生は、保月先生と仲が良いの?」
私を抱え、視線は真っ直ぐに歩き続け、口もとは笑み。
「どうかな。俺は仲が良いと思っているよ、あいつが何を考えているのか分からないけれど。」
保月先生が何を考えているか。
そこはとても単純で、二人の仲の良し悪しの方が複雑なのだと感じたのに。
それは他の人にも当てはまるのかも。
「私は保月先生が、自分の事を知っている大内先生が傍にいることを、本気で嫌がっているようには見えませんでした。」
私に知られたくない事に触れて話す大内先生の存在を、願っているような気もする。
「そっか。それなら嬉しいけどね。」
下から見える表情が、どこか寂しそう。
大人の事情は分からない。私の知らない事。
目を閉じ、身を任せるようにして意識が遠退いていく。
弱い身体。どうすることも出来ない。
仲が悪いのに、自分の家庭環境を教えるだろうか。
知られたくない事を自分から告げたのではない人物が近くに居て、あんな雰囲気は保てない。
保月先生は大内先生に自ら告げたのだろう。
それがいつなのかは分からないけれど。
羨ましい。