小夜啼鳥
「古海?」
自分の表情など分からない。
だけど感情と同調しているなら複雑で、越水くんを困らせてしまうかもしれない。
「ごめんな、俺……」
越水くんの優しさが、言い表せない程の痛みを生み出した。
胸が苦しくて、息をするのも困難な程。
私は両手で彼をゆっくり押し退け、顔を逸らして距離をとる。
「先に行くね。」
越水くんを見ずに、私は走り出した。
追いかけては来ない。ホッとする自分がいる。
そして藤九郎と同様に、彼を利用しようとする私がいた。
自分が壊れていく……こんな状況から逃げたいのに。
私の通る道は家と学校の往復、そしてその近辺。
どこに行けると言うのだろうか。
誰かに頼ることも出来ず、すぐに連れ戻されてしまうような扶養の身。
後何年、繰り返せばいい?
想いも無い恋愛など……嘘でも藤九郎に押し付けてしまった。
そんな我儘を受け入れてまで、私に対する気持ちは揺らがないのだろうか。
満ちていく。心に空いた隙間を埋めるような感覚。
誰かに必要とされているようで、甘い幸せ。
そんなものを受ける資格など、私には。
「ねぇ、あなた。越水くんから告白されて、どうしたの?」
うつむいて歩いていたから、視界に入っていないところから声がした。
でも明らかに、私に対して話しかけているのが分かる内容。