小夜啼鳥
越水くんは顔が少し赤い。視線がさ迷い、濁すような言い方。
次に続く言葉を予測してしまう。気のせいならいい。
「越水くん。私、学校に急いで行きたい用事が少しあるんだ。」
彼の言葉を遮る様な早口で、私は歩を進めながら、彼にも一緒に歩くことを促した。
少し表情が暗くなり、苦笑を見せたけれど、私との距離を縮めて歩く。
不安に近いような、複雑な思い。
藤九郎への拒絶とは違う、別の逃げたいような感覚。
嫌いじゃない。好きでもない。好意は困る。
……別に気まずくなってもいい。
でも、藤九郎とは。
認めたくない想いを自覚する。
感情に比例するのか、足は速度を増していく。
「……ぅみ、古海!」
耳に入る声が大きくなったと思った瞬間、手を引かれてバランスを崩した。
寄り掛かったのは、距離をとりたかった越水くんの胸元。
半ばパニック状態で、顔を上げた。
「古海、好きだ。俺さ、君とあいつが……風間と同居してるって聞いたんだ。」
当然、ウワサにもなるだろう。
藤九郎の存在が異質で。
執事の家系。生まれ育った環境を物語るような立ち振る舞い。
一般家庭の私とは違う。
越水くんからの視線を受け、想いを告げられたと言うのに。
私は。
「……っ。」
『ごめんなさい』
その言葉を呑み込むように、私は口を閉ざす。