小夜啼鳥
込み上げる感情に、涙が溢れて零れ落ちた。
拭おうとする手を菊水さんは止めて、ハンドタオルを私の顔に当てる。
「ありがとう。」
「高いわよ、それ。」
「おいくらですか?」
「そうね、百万円か……あなたの好きな人について聞かせてくれるくらい、価値はあると思うわね。」
ハンドタオルを受けとり、私は目に当てて笑う。
「案外、安いのね。」
「そうかしら。」
「だって、私はあなたの感情をタダで知ってしまったから。」
次々に繋がっていく言葉に、心は洗われるようだ。
溜まっていた黒い感情が流されていく。
涙も止まり、他愛無い話を続けながらお弁当を食べ終わる。
私は空になったお弁当箱を包みに入れて、息を吐き出した。
「菊水さん、聞いて欲しい。私の醜い感情を。」
藤九郎との噂なんて、自分には入ってこない。
仲良くしていた子たちは、突然現れた藤九郎に驚き、私が何も告げてはくれなかったと去って行った。
私には失った物が多すぎる。
溜まった言葉を吐き出すことも出来ず、不安と迷いも解決できずに一人で悩み……
「私は家を出たい。」
全てを菊水さんに語り終った後に出た結論がそれだった。
「う~ん。解決になるか分からないけれど、お昼休みも終わるし、今日は私の家に泊まりなさいよ。」
菊水さんは立ち上がって、私に手を差し伸べた。
その手を取ると、軽く引き上げられて、私は茫然としてしまう。