小夜啼鳥

執事としての教育を受け、それらしい対応を見せていたけれど。
垣間見せる表情や言葉は、甘い中にも強引で。

不味い。罠にはまったかもしれない。
家族もグルなら。いや、まさか。
おじ様まで共謀していたのだとすると。大人が怖い。
藤九郎が恐ろしい。

「七帆は考えすぎなんじゃないの?もし予想通りだとしても、なるようにしかならないわ。ふふふ……覚悟を決めなさい。」

私が帰るのは自分の家。
籠の中の鳥。

覚悟って何に?
約束は、藤九郎の願いを1つだけ叶える事。


下校中。家までの距離が、いつもより遠く感じる。
少しの無言と、どうでもいいような会話の繰り返し。
おかしいな。初々しい何かも近寄らない結界でもあるんだろうか。
視線をさ迷わせ、藤九郎から話題を振られても言葉を濁すような返事で心ここに有らず。

「七帆、言っておくけど。君が今更、何を否定しても俺は逃がしてやるつもりはない。容赦もしない。」

視線を藤九郎に向けると、彼は真っ直ぐに前を向いて歩き続けた。
思わず歩くのが止まってしまう。

そんな私に、彼は振り返って笑顔を向ける。
私は罠にかかったのだと確信し、それでもその笑顔に心は歓びを感じてしまう。

重症だ。この想いは恋以上に複雑で、止められない。
それなら流れに任せて、私を好きだと告げる彼を信じよう。
命を懸けると誓ったあなたに、嘘はないと思うから。


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