小夜啼鳥
「……俺は君だけの執事。君を護るためなら、命も懸ける。七帆、傍に居てもいいかな?」
狡い。
優しい言葉を跳ね除けるほど、私の心は強くない。
今、藤九郎に厳しい拒絶の言葉を述べる事など。
「私が認めなくても、周りが押し通す……藤九郎、あなたは。」
視線を合わせたまま、私は言葉を途中で閉ざす。
優しい眼差しに心が揺らいでしまいそうになる。
「そうだね、君の気持ちは俺を含めて無視しているから。だけど。覚えていて欲しいんだ。俺は決して、周りに感化されたわけじゃない。俺の意志で、ここにいるんだと……忘れないで。」
遠慮気味な手が、私の頬に触れる。
ゆっくり指でなぞるように撫でて、愛おしいものを見るような視線を注いでいく。
沁み込むような熱。息詰まるような苦しさ。
それなのに。甘い。
優しい声が頭に響く。
幼い頃と違って、低くなった男性の声。
まるで知らない人のような気がして戸惑いつつ、彼の視線を逸らすことが出来ない。
「大事にするね、この貴重な時間を。俺は味わうよ、例え誰かから与えられた状況だとしても……っ」
何かに駆られる様に、私は藤九郎の口を手で塞いだ。
これ以上、甘く囁かないで。
惑わされてしまうから…………