小夜啼鳥

ナイチンゲール


朝起きて、憂欝な気分。
夢から覚めていないかのような浮遊感。

鏡を見つめ、ため息。酷い顔。
この家から出たい。

そして、いつもと同じ時間に部屋のドアをノックする小さな音。

「起きているわ。先に、下に行っていて。」

ドアの方に顔を向け、明らかに冷たい言葉と口調。
そこにいるのは藤九郎だと分かっている。

優しい彼を傷つけているのが、苦しい。
だけど、他に当たるところがない。

ごめんなさい。
分かっているけれど、どうしていいのか分からない。

昨日の甘い声が頭に響くような、記憶の反芻。
鏡に向き直って、自分の表情に嫌悪する。

『俺の意志で、ここにいるんだ』

私の心は答えを知っている。

私は思わず鏡から目を逸らした。
急かされる様に、その場を離れたくて、カバンを手にドアを開ける。

いつもと同じ。
先に行くようにと促したはずの藤九郎は、私が部屋から出てくるのを待っていた。

昨日とは違う方法で、今日を乗り切らなければ。

「藤九郎、あなたは私を嘘つきにしたりはしないわよね?」

酷い言葉。
私の言葉で彼の表情が陰るのを見て、心は痛むのに。
どこを間違えてしまったのだろうか。

「そうだね、君がそう望むのなら。俺は約束を信じるよ。」

「約束なんて知らないわ。でも……。藤九郎、『彼女』が待っているわよね。私と一緒に登校なんて出来ないはずよ。」


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