三度目の結婚 〜最初から相手は決まっていたようです〜

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「コーディアナ」



 聞こえるはずのない男の声がする。

 後宮どころか、ハッ・ティバの宮殿自体から抜け出した先の商家の一室で、コーディアナは相変わらず床に寝そべっている。

 もはや起き上がる気力がないのである。

 今度はエリンがコーディアナを呼んだ。

「コーディアナ様」

「なによ」

「ご所望の品です」

「氷菓子じゃないじゃない」

「ご所望の、『いい男』でございます」

 コーディアナは寝台に背を向けた。

 正しくは、寝台に腰かける青年に背中を向けた。

「コーディアナ様ご所望の、『初めてを捧げてもいいくらいの男』でございます」

「どっこがぁぁぁあ? もう黙ってエリン!」

「……いい男だろう、俺は」

 コーディアナは首だけ巡らせて寝台を見た。

 そこに座る男――ランダールのシヴァルファスをひと睨みしてから、頭を左右に振る。

「チェンジでお願いします」

「異議あり」

「チェンジで。変更でお願いします」

「あ、初回はチェンジ不可なんです」

「乗ってくるんじゃないわよ!」
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