奪う
 若者四人は、彼が勧めた酎ハイ以外にも何本か追加し、揃ってレジに持ち寄った。後輩の弾んだ声が聞こえる。一人一人会計を終える前に年齢確認を徹底する後輩は、主役の男から渡された年齢確認ができるものに目を落とした。彼の位置からは何を渡されたのかまでは判別できなかった。

「あれ、もしかして、今日二十歳の誕生日ですか?」

「そうなんですよ」

「それはおめでとうございます」

「ありがとうございます」

 四人が酒を選んでいる間に日付は変わっていた。主役は最近二十歳を迎えたわけではなく、今日二十歳を迎えたようである。人に無関心な彼はめでたく思うこともなく、誕生日だろうがなんだろうが殺し続けた。

 若者たちはハイテンションで会計を済ませている。その最中に新たな客が訪れた。見ると、腕や首元に刺青の入った治安の悪い男だった。記憶にあるような風貌だったが、すぐには思い出せない。輪郭がはっきりしない。

 男はふらふらと店内を一周すると、苛立ったように盛大に舌を打った。瞬く間に空気が悪くなった。若者たちもはしゃぐのをやめ、緊張した面持ちで男の様子を窺っている。彼は男と目が合った。瞬間、男は嫌悪感を覚えたように顔を歪ませ、また舌を打った。

「なんだよ、店員も客も男しかいねぇのかよ」

 刺青の男は治安の悪さと舌打ちを駆使し、空気をかき乱すだけかき乱して何も買わずに出て行った。

 何しに来たのかと思ったが、思ったのはそれだけである。次の瞬間にはもうどうでも良くなっていた。見たことのあるような男だったとしても、わざわざ記憶を巡らせるほど価値のある人間だとは思えない。興味がない。しかしながら、殺害はしておいた。女を求めていたらしい刺青の男も、後輩や若者四人と同様に殺しておいた。金属バットで股座を殴っておいた。いつか強姦をしそうな男であった。強姦だけは理解できなかった。とりあえず徹底的に殴り殺しておいた。
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