奪う
「え、何あの人」

「刺青えぐすぎ。全然かっこいいと思わねぇ」

「男しかいないけど掘れるケツならいっぱいあるのに舌打ちするなんて酷いな」

「こんなところで下ネタやめろよ恥ずかしい」

「でも男だけで良かったな。女の人いたらどうなってたか」

 四人は理解不能な言動をして去って行った刺青男の陰口を叩きつつ会計を済ませ、後輩と、それから再び彼にも礼を言ってコンビニを後にした。騒がしかった客を排出した扉が閉まると、はっきり聞こえていた人の声がくぐもった声に変わり、すぐに聞こえなくなった。

「なんすかさっきの刺青の人。ガラ悪かったっすね」

 ようやく静かになったと思ったら、入れ替わるように別の声に話しかけられた。彼は後輩を一瞥し、雑に返事をするのみで会話を続けようとはしなかった。

 彼に冷たく扱われたとしても、超クールなのが先輩なのだと受け入れている後輩は、全く気にした素振りも見せずにべちゃくちゃべちゃくちゃ話し続けた。

「やっぱり先輩と一緒だと、何かと変わったことが起きるっすね。でも先輩とならどんなハプニングも乗り越えられそうっす。そうだ先輩、酎ハイ売ってる時に思ったんすけど、今度俺とサシ飲みしないっすか? もしくは俺の彼女と三人で飲まないっすか? 俺先輩のこともっと知りたいんすよ。好きなこととか嫌いなこととか、普段何してるのかとか、些細なことでもたくさん知りたいんすよ。彼女も推しの先輩のこと知りたがってるんすよね。だから、いいっすよね先輩。いつか絶対、絶対っすよ。予約しときますんで。忘れないでくださいよ先輩。マジで絶対っすよ」
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