奪う
「あれこれ考えても意味ないですね。もうここまで来たら行くしかないので行きましょうか。イツキは車酔いしたことにします」
彼の後に続いて車を降りたカナデが鍵をかけ、助手席側に回り込んだ。傍でカナデの気配や微かな息遣いを感じる。吐き気を催す不快感のせいではきはきと喋ることもきびきびと動くこともできないでいる彼の手首を、カナデは素早く掴むなり強制連行した。
「もうちょっとだけ頑張ろう、イツキ。ユウコに言えばゆっくり休ませてもらえるはずだから」
カナデは恥ずかしげもなくアオイを演じ、違和感もなくタメ口を利いた。慣れていると分かる口調だった。雰囲気までもが変わっていた。
アオイになったカナデに引っ張られながら、これに合わさなければならないのかと別の意味の頭痛が加わった。地面を踏む度に感じる微かな振動すら頭に響いており、最悪なコンディションだった。それこそ、無理やり歩かされなければ歩き出せないほどに。カナデの手が離れれば、暗い夜の中ではその姿を見失ってしまいそうなほどに。
「きもちわる」
片手で口を押さえ、思わず小さく吐露してしまえば、そこから胃の中のものを吐き出してしまいそうになった。下手に喋るものではないと自重していたが、既にカナデがアオイになってしまった手前、彼もミコトからイツキにじわじわとでも切り替えなければならなかった。車に酔っただけのことで計画を失敗させるわけにはいかない。
「運転、下手くそ、すぎるだろ」
「ごめんね。俺イツキみたいに上手くなくてさ」
イツキとしてカナデの運転技術を途切れ途切れに詰ると、アオイとしてカナデは謝った。すぐに返答をくれたことで、アオイの親友であるイツキのキャラはこれで間違っていないという気にさせられる。
彼の後に続いて車を降りたカナデが鍵をかけ、助手席側に回り込んだ。傍でカナデの気配や微かな息遣いを感じる。吐き気を催す不快感のせいではきはきと喋ることもきびきびと動くこともできないでいる彼の手首を、カナデは素早く掴むなり強制連行した。
「もうちょっとだけ頑張ろう、イツキ。ユウコに言えばゆっくり休ませてもらえるはずだから」
カナデは恥ずかしげもなくアオイを演じ、違和感もなくタメ口を利いた。慣れていると分かる口調だった。雰囲気までもが変わっていた。
アオイになったカナデに引っ張られながら、これに合わさなければならないのかと別の意味の頭痛が加わった。地面を踏む度に感じる微かな振動すら頭に響いており、最悪なコンディションだった。それこそ、無理やり歩かされなければ歩き出せないほどに。カナデの手が離れれば、暗い夜の中ではその姿を見失ってしまいそうなほどに。
「きもちわる」
片手で口を押さえ、思わず小さく吐露してしまえば、そこから胃の中のものを吐き出してしまいそうになった。下手に喋るものではないと自重していたが、既にカナデがアオイになってしまった手前、彼もミコトからイツキにじわじわとでも切り替えなければならなかった。車に酔っただけのことで計画を失敗させるわけにはいかない。
「運転、下手くそ、すぎるだろ」
「ごめんね。俺イツキみたいに上手くなくてさ」
イツキとしてカナデの運転技術を途切れ途切れに詰ると、アオイとしてカナデは謝った。すぐに返答をくれたことで、アオイの親友であるイツキのキャラはこれで間違っていないという気にさせられる。