奪う
「あの、どうぞ、ソファーにでも、腰、腰を、下ろしてください。それか、布団、敷きましょうか……? 嫌じゃなければ、ですが……」
リビングに三人が揃って早々、ユウコはどぎまぎしながら彼に提案した。眼鏡のレンズの向こう側にある目は、ソファーを見たり彼を見たりカナデを見たりしており落ち着きがなかった。
いくら気分が悪くても、ずっと口を噤み続けるのは逆効果かもしれない。声を出せないわけではないため、何かは言うべきだろう。手にかけるまでは、決して疑われてはならないのだ。決して怪しまれてはならないのだ。自分は今、アオイの親友のイツキである。ミコトではない。彼は言い聞かせた。
「ソファーで、十分です。そこで少し、横になっても、いいですか」
息が続かない。声を出すとやはり、胃の中のものが逆流しそうになる。唇を引き結んだ。いずれ症状がなくなるまでの辛抱だ。
「それは、どうぞ。い、居心地は、良くない、かも、しれませんが……」
「すみません。助かります。アオイ、俺、ちょっとだけ、寝させてもらう」
「うん。ゆっくり休んで、イツキ」
するりと手を離される。引かれていた手綱を離されるような妙な心地がした。ここからは、いつどのタイミングでも殺していいですよ、とアオイの仮面を被ったカナデに言われたような気がした。
吐き気を催すような気持ち悪さに苛まれながら、彼はソファーの上に体を横たえた。あらゆる情報を遮断するように目を閉じる。眠ってしまえば楽になる。楽になったらユウコを殺せる。
唾を飲み込んだ。深呼吸を繰り返した。徐々に意識が低下していった。車に酔って死にかけだった彼は、死んだように眠りについた。夢も何も見なかった。
リビングに三人が揃って早々、ユウコはどぎまぎしながら彼に提案した。眼鏡のレンズの向こう側にある目は、ソファーを見たり彼を見たりカナデを見たりしており落ち着きがなかった。
いくら気分が悪くても、ずっと口を噤み続けるのは逆効果かもしれない。声を出せないわけではないため、何かは言うべきだろう。手にかけるまでは、決して疑われてはならないのだ。決して怪しまれてはならないのだ。自分は今、アオイの親友のイツキである。ミコトではない。彼は言い聞かせた。
「ソファーで、十分です。そこで少し、横になっても、いいですか」
息が続かない。声を出すとやはり、胃の中のものが逆流しそうになる。唇を引き結んだ。いずれ症状がなくなるまでの辛抱だ。
「それは、どうぞ。い、居心地は、良くない、かも、しれませんが……」
「すみません。助かります。アオイ、俺、ちょっとだけ、寝させてもらう」
「うん。ゆっくり休んで、イツキ」
するりと手を離される。引かれていた手綱を離されるような妙な心地がした。ここからは、いつどのタイミングでも殺していいですよ、とアオイの仮面を被ったカナデに言われたような気がした。
吐き気を催すような気持ち悪さに苛まれながら、彼はソファーの上に体を横たえた。あらゆる情報を遮断するように目を閉じる。眠ってしまえば楽になる。楽になったらユウコを殺せる。
唾を飲み込んだ。深呼吸を繰り返した。徐々に意識が低下していった。車に酔って死にかけだった彼は、死んだように眠りについた。夢も何も見なかった。