奪う
恋人に甘やかされ蕩けた姿を見られた気まずさからだろう、ユウコは慌ててリビングを出ていきトイレへ逃げ込んだ。
「タイミングが悪いよイツキ。もう少しでキスできそうだったのに」
「キスしたら止まらなくなるだろ。俺からすればタイミングが良かった」
二人はイツキとアオイとして言葉を交わし、ミコトとカナデとして目を合わせた。
彼が回復して早々、絶好のチャンスである。殺るならユウコがトイレから出てきたタイミングだ。家主がいない今なら、簡単に刃物も入手できる。次に殺す人間は、身体に多くの穴を空けると決めていた。
彼はソファーから立ち上がった。頭はもう痛くない。気持ち悪くもない。すっかり本調子に戻っている。睡眠は最も手っ取り早い回復方法である。
ポケットに突っ込んでいた手袋を引っ張り出し、両手に嵌めながら台所へ向かった。カナデは何も言わず、ユウコと一緒に嗜んでいたらしいコーヒーを優雅に飲んでいた。
包丁を探して手に取ると、いよいよ殺せるのだと瞬く間に胸が弾み、体温が上がった。内心で高揚していても、彼はそれを噯にも出すことなくユウコを待ち構えた。絶対に殺す。絶対に仕留める。失敗は許されない。ぶっ殺す。ユウコは今夜、彼に殺される運命にある。
「イツキ」
「何、アオイ」
「イツキが寝てる時にユウコがね、イツキの体調が良くなったら一緒にプリンでも食べようって言ってたからさ、お言葉に甘えて後でプリン食べよう」
「分かった。プリンとか結構久しぶりに食べるな」
「久しぶりならめちゃくちゃ美味しく感じると思うよ」
互いに目も合わさずに、適当に、静謐に、会話を重ねた。彼は包丁を触り、カナデはコーヒーを飲む。デザートはもう少し後であるが、その時にはもう生きたユウコはいないだろう。プリンでも食べようと提案したらしいユウコは、プリンを食べられないまま死んでいく。
「タイミングが悪いよイツキ。もう少しでキスできそうだったのに」
「キスしたら止まらなくなるだろ。俺からすればタイミングが良かった」
二人はイツキとアオイとして言葉を交わし、ミコトとカナデとして目を合わせた。
彼が回復して早々、絶好のチャンスである。殺るならユウコがトイレから出てきたタイミングだ。家主がいない今なら、簡単に刃物も入手できる。次に殺す人間は、身体に多くの穴を空けると決めていた。
彼はソファーから立ち上がった。頭はもう痛くない。気持ち悪くもない。すっかり本調子に戻っている。睡眠は最も手っ取り早い回復方法である。
ポケットに突っ込んでいた手袋を引っ張り出し、両手に嵌めながら台所へ向かった。カナデは何も言わず、ユウコと一緒に嗜んでいたらしいコーヒーを優雅に飲んでいた。
包丁を探して手に取ると、いよいよ殺せるのだと瞬く間に胸が弾み、体温が上がった。内心で高揚していても、彼はそれを噯にも出すことなくユウコを待ち構えた。絶対に殺す。絶対に仕留める。失敗は許されない。ぶっ殺す。ユウコは今夜、彼に殺される運命にある。
「イツキ」
「何、アオイ」
「イツキが寝てる時にユウコがね、イツキの体調が良くなったら一緒にプリンでも食べようって言ってたからさ、お言葉に甘えて後でプリン食べよう」
「分かった。プリンとか結構久しぶりに食べるな」
「久しぶりならめちゃくちゃ美味しく感じると思うよ」
互いに目も合わさずに、適当に、静謐に、会話を重ねた。彼は包丁を触り、カナデはコーヒーを飲む。デザートはもう少し後であるが、その時にはもう生きたユウコはいないだろう。プリンでも食べようと提案したらしいユウコは、プリンを食べられないまま死んでいく。