奪う
 彼は抜いた包丁を再び刺した。皮膚を突き破る感触に興奮した。すぐさま抜いた。更に位置を変えて刺した。穴が空く感触に興奮した。すかさず抜いた。新たな箇所を刺した。気分が高揚した。勢いよく抜いた。また刺した。夢中になった。また抜いた。また刺した。気持ちよかった。また抜いた。また刺した。たまらなかった。また抜いた。刺した。癖になりそうだった。抜いた。刺した。まだまだ刺したかった。抜いた。刺した。抜いた。刺した。抜いた。刺した。抜いた。刺した。

 ユウコの両手がだらんと落ちた。何気なく見ると、泳いでいた目に光が失くなっていた。口端からは唾液のみならず、泡か何か得体の知れない液体が垂れていた。ユウコは死んだようである。しかしながら、念入りに殺しておきたい彼は、首を絞めたままの手を離すことなく更に力を込めようとしたところで、その必要もないほどに指先が皮膚に食い込んでいることに気づいた。腹を繰り返し刺しているうちに、首を絞めている手にも意図せず力が入ってしまったようだ。確かに手が少し疲れている。

 彼は死んだユウコからその手を離した。突き刺した包丁も引き抜いた。支えをなくしたユウコは、重たく鈍い音を響かせて床に倒れた。彼は足でユウコの死体を仰向けにするなり屈んだ。血溜まりに足を突っ込んでいても気に留めず、身体に包丁を突き刺すことを再開する。腹は散々刺した。穴と穴が繋がり一つの大きな穴となった箇所からは、血液と一緒に臓物が顔を出しているように見えた。後で引っ張り出してみるという楽しみを取っておき、彼は続いて胸の辺りを傷つけた。腹と同じように何度も何度も刺し、遺体を損壊し続けた。首も顔も傷をつけた。上半身が済むと、次は下半身である。太腿から足裏まで満遍なく刺す。刺す。刺す。刃が入りにくいこともあったが、刺すことに意味がある。刺して、刺して、刺して、気の済むまで刺して、彼は予め決めていたことを無事に成し遂げた。
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