奪う
 胸のもやもやが晴れたような達成感に息を吐き、楽しみに取っておいた臓物らしきものを引っ張り出そうと手を伸ばしたところで、ふと視線を感じて彼は振り返った。リビングの出入り口の前にカナデが立っていた。薄笑いを浮かべた胡散臭いその表情は、アオイではなくカナデであった。ユウコは死んでいる。もう演技をする必要はなかった。彼に至っては、殺す前から既にミコトのようなものだった。

「今回もえげつないですね。でも俺、ミコトさんが残酷に人を殺してるの見るの、結構好きかもしれません」

「悪趣味ですね」

「それはお互い様ですよ」

 仮にも付き合っていたユウコが惨殺されても平然としているカナデは、全くユウコに思い入れなどないようである。ただ本当に、金を奪うためだけに近づいたのだ。金さえ手に入れば、相手がどうなろうと何とも思わない。カナデはそういう人間だ。犯罪行為が異なるだけで、彼と大して変わらない。だからこそ、行動を共にできているのだろうと彼は思う。

 カナデから顔を逸らした彼は、ユウコの腹から飛び出しているものに触れた。ぶよぶよしている。意外と悪くない触り心地だった。

「それ、内臓ですか?」

 先程よりも近くで声が聞こえた。あまり首を動かさずに視線を巡らせると、こちらに寄ってきたカナデが隣でしゃがむところだった。彼の持っている、小腸か大腸か定かではないグロテスクな臓物を見つめている。

「内臓です」

 彼は短く答え、触れているそれを引っ張り出してみた。糸を垂らすように腕を高く上げても途切れることはなかった。

「太さ的に小腸でしょうか。人の腸は何メートルもあるとどこかで聞いたことがあります」

「そうですね。俺もどこかで聞いたことがあるような気がします」
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