売られた少女はクールな闇医者に愛される

距離

部屋に気まずい雰囲気が流れる。

どうすればいいんだろう。
雪菜は下を向くしかできない。


「俺は垂井冬弥、22歳。この家では主に怪我や病気した人の治療とかをやってる。趣味は絵かな。
自己紹介って何言えばいいんだっけ……。」

冬弥は恥ずかしそうにしながら、話す。
まだ数日の付き合いだが、一緒にいて怖いことをされたことはないし、辛いとすぐ気づいて助けてくれる。雪菜は冬弥に対する恐怖心が自然と減ってきていた。

そして自己紹介をする冬弥を見て、笑みがこぼれる。
歳は上だが、恥ずかしがる様子は少年のように見えた。


「私の名前は高杉雪菜で、高校2年生の16歳です。趣味はえーと……あっ料理は好きです。あとはえーと……」

雪菜が困る様子を見て、冬弥もふっと笑顔を浮かべる。

「雪菜ね。俺の事は冬弥でいいよ。この家の人はみんなそう呼んでる。」

「さすがに呼び捨てはできません。冬弥さん?。」

雪菜は男性を下の名前で呼んだ経験はなく、恥ずかしくなる。

「まあなんでもいい。好きなように呼んで。」

「あの、、、冬弥さんはいつからここにいはるんですか?」

「俺は3歳の時から。親父さんに拾ってもらって、それからここで育ててもらってる。」

「そうなんですね。」

極道の人っていつからこの世界に入るのだろうか。生まれながらの血筋ならわかるが、一般人が極道に入るってどういうルートなのか想像つかなかった。冬弥にも色々あるのかなと思う。

「雪菜は怖いんだろ。いわゆるヤクザってやつが。」

冬弥がクシャッと笑いながら言う。

「いえ、いや…はい、いやいいえ……。」

雪菜はうつむく。


「無理して嘘つこうとしなくていい。見てたらわかる。俺は物心ついた時からこの世界だし、そりゃ色々みてきたけど、この家はそこまで怖がらなくて大丈夫だと思うぞ。一般の女の子に手を出すようなクソみたいな組じゃねえ。」

冬弥の発言に少しほっとした表情になる。

「ただ勝手に逃げようとしたら容赦しねーけどな笑」

冬弥がイタズラそうな顔で言うと、また雪菜の顔が少し強ばりをみせる。

冬弥がその顔を見て笑った。

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