売られた少女はクールな闇医者に愛される
雪菜がお粥を食べれたと報告を受け、雅人と真也が部屋に来た。

「はじめまして。雪菜ちゃんだよね!若の側近の矢澤真也です。こちらが、京極組若頭の京極雅人さんです!」

真也が明るく自己紹介をする。

「お世話になっています。高杉雪菜です。」

「体、辛くないか?」

雅人が聞く。

「はい、ありがとうございます。」

雪菜は下を向きながら話す。2人は決して怖がらせるつもりなんてないが、極道のオーラみたいなものがある。
雪菜は橋本組での生活からその雰囲気が苦手になっていた。

「冬弥とは仲良くなったか?」

「えっ??あっ……」

真也の言葉に雪菜はなんと答えていいか分からない。
とうやとはおそらく、治療してくれた若い男の人だろう。家に来てから、この人以外会っていない。
仲良くなんてない。ほとんど会話はしていないのだから。

真也は冬弥の名前を言ってもピンときていない雰囲気に気づく。

「冬弥!!お前、自己紹介したか?」

「してませんけど……。」

「なんでだよ!!親父さんにも寄り添うように言われたろ!!名前すら分かんなかったら、雪菜ちゃんがなんて呼べばいいかわかんねーだろうが!!まずは自己紹介だろーよ。」

真也と冬弥の話に雅人は爆笑する。

「ひゃひゃひゃははー。
冬弥まじで最高だわ。」

「若ー、笑ってる場合じゃないっすよ!これはなかなかの問題です!!」

真也はそう言ってため息を吐く。

3人の会話が聞こえる。橋本組よりは雰囲気が良いのは何となくわかる。だけど、極道だ。怖い人達に決まってる。こんなお世話になってるだけで許されるはずがない。

「あの……私は何をしたらよろしいのでしょうか。料理ですか?掃除ですか?玩具としてはまだまだ足りないと思いますが、どんな事でも頑張ります。」

雪菜が小さい声で伝える。震えてあまり声が出ない。
怖いことじゃなければいい、橋本組では玩具として、全然ダメだと言われた。男の人とはできればしたくない。掃除洗濯料理なんかですむなら、どんなことでもやらなくてはと思う。

3人は雪菜の辛そうな雰囲気を見つめる。

雅人がしゃがみこみ、ベットに座って下を向く雪菜と目を合わせる。

雪菜は玩具は下に這いつくばれと散々言われてきた。雅人が自分より下の視線にいることに焦り、慌ててベットから降りようとすると、このままでいいと雅人にとめられる。

「雪菜ちゃん、俺はこの家で君を商品や召使いのように扱うつもりはないよ。今は体を万全にすることだけを考えて。」

雪菜の目が見開く。

「でも私、お金持ってないんです。だから、このままお世話になるなんて出来ません。ご飯ももらって、体も治してもらってるのに何も返せません。だから……」

雪菜は涙声になる。

「雪菜ちゃん!!きみはここを出て、行くところがある?ごめんだけど、色々調べさせてもらった。家には帰れないだろ。それにここを出ればおそらく君を探している橋本組に捕まって戻されるだけだ。」

雅人の言葉に目頭に溜まっていた涙がこぼれる。

「この家にいる間、君を怖がらせるようなことはしないと約束する。勝手に俺たちがこの家に雪菜ちゃんを連れてきたんだから、お金のこととか気にしなくていい。この先のことはもう少し体調が戻ってから考えよ。今は体を治すことだけ考えて。」

雅人はそう言って、雪菜の頭を撫でる。

雪菜の表情が少しだけ柔らかくなったのがわかる。

「体を早く治すためにも、冬弥を頼れよ!!しんどかったら言うんだぞ!!
あと冬弥はもう少し話しかけやすくしてやれよ。まず自己紹介だぞ!」

雅人がそう言って2人は部屋を出ていった。
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