【完】 瞬く星に願いをかけて

第9話 「憂鬱なアルバイト」

 
 次の土曜日が来るのは一瞬だった。


 まぁ、「テストが近づいてきている」みたいな憂鬱さはあったけど。


 先輩からのアドバイス、どんなのだろう?


 私はそんなことを考えながら、バックヤードでひとり待ち続けた。


 大丈夫だよね! 


 だって、今日の運勢は最強だもん! 


 朝の占いは一位だし。


 しかも、ラッキーアイテムは恋愛小説。


 これ以上ない組み合わせ……って思っていた時期が私にもありました。


 朝は目覚ましが鳴らなくて講義に遅刻。


 猛ダッシュで駅に向かったが電車を乗り逃す。


 先生にみっちり怒られた後のお昼休憩は、お弁当を家に忘れて食べられなかった。


 財布も忘れて……最悪。


 こんな状態でバイトだなんて……せっかく、先輩と会えると思っていたのに。


 ああ、少しフラフラする。


 そんな疲れ切った状態で、キャンパスから本屋にたどり着いたのだ。


 大丈夫かな、私……


「こんなところで何してんだ?」


 2週間ぶりの先輩の姿に、さっきまでのイヤなことが全部吹き飛ぶ。


「美琴くん……風邪は大丈夫なの?」


「美琴『さん』、な?」


 先輩が優しく私の頬をつまむ。


「み、美琴さん、い、いだい、ですよぉ……」


 少し緊張がほぐれる。


「アドバイスのことだけど」


 ドキッ⁉


「最後がベタ過ぎるような気がするのが、気になったかな。パーティの最中に主人公が悪い王子にさらわれて、絶体絶命のピンチに助けに来る。そして、ラストにお互い想いを伝えてハッピーエンド……ってのは、ベタ過ぎだろ」


 だって、ベタがいいんだもん。


 読んでいて悲しいよりも楽しい方が良いもん!


 それに、バッドエンドは嫌いだし。


「ま、王子様がお姫様を助けるって展開は俺も好きだぜ?」


 ええっ、それって……あれ?


「名前がミコトってので、少し恥ずかしかったけど」


 も、もうダメ……頭が爆発しちゃいそう。


「顔、赤いぞ?」


 そ、そりゃそうなります!


 私のとんでもない過ちを掘り返されて……


「今日はバイト休め。熱あるだろ」


 えっ?


「へ、平気ですから……ひゃっ!!」


 先輩の額が、私のおでこと重なり合う。


 この前とは違う。


 お互いの息遣いがはっきりと分かってしまうほど近く……


 心拍数が急上昇し、体温が燃え盛るように熱くなる。


 こんな致死量のドキドキは、反則ですぅ……


「店長にはオレから言っとくから。家まで送ってやるよ」


 そ、そんなことされたら……


「い、いえ、結構です!」


 思わず先輩を押しのけて、この空間から逃れようと反射的に動いてしまう。


「あっ、待てって!」


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