恋とバグは仕様です。 ~営業スマイルで喧嘩して、恋に落ちるまで~


05|レビューのないコードは、不完全だ

 翌朝。

 社内では、リリースを控えたデモ版『Virtual Pair』の最終検証が行われていた。

 凛は無言でモニターに向かう。誰よりも集中していた。

 そこへ──不意に、聞き慣れた声が届く。

「……白河凛さん、コードレビュー、お願いします」

 ──遥人だった。

「なんで……。もう別プロジェクトじゃなかったの?」

「……昨日、異動断った」

「え?」

「レビューのないコードなんて、不完全だろ?」

「……っ」

「お前がいないプロジェクトなんて、やっても意味ねぇよ」

 彼の目はまっすぐだった。笑っていなかった。

「凛。お前のコード、最初から俺の中じゃ“本命”だったよ」

「ちょ……なに、……言って……」

「だからもう、仮想じゃなくていい。お前が好きだ。ちゃんと付き合ってほしい」

 その瞬間。

 凛の中で、心のバグが、ようやく“更新”された。
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