恋とバグは仕様です。 ~営業スマイルで喧嘩して、恋に落ちるまで~
03|“仮想恋人”のはずなのに
AIテストは、会話ログの収集から始まった。
特別に用意された「恋人同士の共有デスク」に二人並び、互いに向き合う形で話す。
「ねぇ、はるくん。お昼、どこ行く?」
「どこでもいいよ、りんちゃんの食べたいもので」
表面上は完璧な会話。録音ログも滑らか。
だが裏では。
「“りんちゃん”って呼んだの、今期初なんですけど」
「“はるくん”って呼ばれたの、生まれて初めてなんだけど。鳥肌立ったわ」
「次は目を見て笑ってください。トーンが死んでます」
「そっちこそ、笑顔バグってるぞ?」
そのくせ、他の社員が通ると──
「わぁ〜、本当にお似合い!」
「いつから付き合ってたの?」
──と勘違いされまくる始末。
「この……地獄のプロジェクト……」
「それな。仕様ミスとしか思えない」
と、顔では笑って、内心毒づく日々が続く。
……だが。
そんな中、ふとした瞬間に心のフレームが崩れるような「バグ」が起こる。