世界でいちばん長い夜
「先にシャワーを浴びよう。こっちにおいで」

 土屋さんはそう言うと私をベッドの上に起こし、手を取ると浴室へと連れて行く。

「着替えを出しておくから、先にシャワーを浴びて汗をながすといい。メイク落としやスキンケアの道具はその間に用意しておくよ」

 そしてこう言い残して浴室を後にした。
 私は状況が呑み込めないまま浴室の隣にある洗面所で立ち尽くしていた。
 土屋さんはどうやら近所のコンビニに向かうつもりなのか、玄関から外に出る音が聞こえた。
 何だか色々と申し訳ない気持ちになりながらも、汗で肌に張り付いた髪の毛が気持ち悪い。土屋さんの申し出をありがたく受け入れてシャワーを浴びることにした。

 * * *

 土屋さんがクレンジングやスキンケアを買いに行ってくれている間に、私は土屋さんのシャンプーやボディソープを借りて一日の汗を洗い流した。少しでもゆっくりと時間をかけたのは、急いで浴室から出た時に土屋さんとブッキングしないためだ。
 着替えの服を用意してくれると言う言葉に素直に甘えることにしたのは、さっきまで着用していた服が汗まみれだったから。着替えは素直に借りることにするとして、下着はさてどうしよう……。
 下着こそ汗まみれになっている。まさかノーブラノーパンで過ごす訳にはいかないし。

 シャワーを浴びて終わった時、浴室の外で動く人影が映った。きっと土屋さんがコンビニから帰って来たのだろう。
 私のシャワーの音が止まったのを確認し、浴室の扉をノックした。すりガラスのようにはっきりとシルエットは見えないけれど、近付けばそれなりに姿は見えるので、私は扉の側には近寄れない。

「ここに着替えと化粧品とか置いとくから。下着は洗濯機回すからネットに入れておいて」

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