非日常のワンシーン
男と会ったのは学校が始まって直ぐの頃。
お昼時にできる食堂での長蛇の列を待つ間、「長いですね」から始まって今はこうして男の部屋で映画を見たりゲームをしたりする程の仲。
男の家に入り浸るのだから、明確な言葉が無くても確かに付き合っていると錯覚するかも知れない。
そこを私が男とそういう関係であると思わなかったのは、男が別の友人と二人暮らしで、そして私がこの部屋に上がるときは大抵ルームメイトとその友達も一緒なことが多かったから。
実際、二人きりという状況も一年を通して数えても両手の指で収まる程しか無かった。
こうして私が付き合っていないと思ったくらいだから当然、二人でどこかに遊びに行くということも無ければ、キスをしたという事実も無い。


さて、どう答えたものか。


男は不安そうに私を見る。
その目は不安そうでもあるけど、中々答えない私のを急かしている様にも見えた。
早く答えを返さなければならない。


私が出した答えは、―…



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