彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
「雨宮先生、昨日もありがとうございました」

 お昼休み。
 待ち合わせたルーフガーデンに先生がやってくると、私は頭を下げ、おにぎり二個が入った紙袋を差し出した。

「どういたしまして。こちらこそ、またおにぎり、ありがとう。今日の具は?」
「ちらし寿司と、鰻ときゅうりの酢の物です」
「へえ。豪華」
「これまでより、もっとお礼しなくちゃと思って。お口に合うとよいのですが」
「大丈夫。いつも美味しい――あの、野崎さん」

 先生が私を真っすぐに見た。その表情は、少し不安そうだ。

「はい?」
「……いや、なんでもない。行くよ、部屋で食べる。午後の会議の準備、まだ終わってなくて」

 先生は申し訳なさそうに言い、私はちょっとがっかりした――って、がっかり? そうか、期待してたのか私。先生と一緒にお昼を食べることを――そういえば先生、最近は前よりずっと話しやすい。

 いつの間にか雨宮先生は、私にとって「一緒にいると安心できて楽しい人」になっている。今でもちょっと緊張はするけど、あの雨宮先生と普通に話せるようになったなんて、なんだか信じられない。

 ベンチに座り、飛行機を見ながら、私はおにぎりを食べた。

 今日のおにぎり、うまくできた。
 雨宮先生も美味しく食べてくれるといいな。

 そういえば先生、さっき何を言いかけたんだろう。先生の不安そうな表情って、思えば見るの、初めてだ――何かあったんだろうか。私がもっと聞く姿勢を見せたら、話してくれただろうか。

 もっと知りたい、雨宮先生のこと。

 そう思った時だった。

「野崎さん」

 後ろから声をかけられた。

 この声は――香奈ちゃん。
< 44 / 62 >

この作品をシェア

pagetop