彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
 映っているのは、カジュアル仕様の雨宮先生だ。

 どうしたらいいのか、わからずにうろたえた瞬間。

「あ、先生いらっしゃった⁉ よんだの、アタシ! 野崎さんは『雨宮先生は呼びません』って言ってたけど、もしかしたら来てくれるかなあ~って、思い切ってメールしちゃった!」

 メール? どこで連絡先を――あ、そうか。雨宮先生、内見の時にみんなに名刺、渡していたな。

「超好みのタイプっていうか、滅多にいないよね、あんなに素敵な人」
「あら、井上さんも? 私もよ。私はね、莉々ちゃんとお似合いだと思ったからよんだの」

 嬉々として続けた井上さんに、塚本さんが言った。
 気のせいだろうか、井上さんと塚本さんの間に静かな火花が散った気がした。
 島内さんと林さんは、そんな二人を笑って見ている。

 そんな経緯で雨宮先生は、この日の会に加わった。

「これ、遅くなったけどお祝い」

 玄関で出迎えた私に、やや無造作に先生が差し出したそれは、たっぷりの氷と共にワインクーラーに入れられたシャンパン。

「先生、これを持って電車に?」
「まさか。タクシーで来た。あの――野崎さん、話したいことが」
「あら―! シャンパン⁉ 素敵! プレゼントのセンスもさすがですねー」

 雨宮先生の言葉は、ハイテンションな井上さんに遮られてしまった。

 何を言おうとしたのだろう。

 餃子を食べている間も、デザートのフルーツポンチ(島内さん・林さん作)を食べて紅茶を飲んでいる間も、私はずっと気になっていた。




< 52 / 62 >

この作品をシェア

pagetop