あなたの子ですが、内緒で育てます
 ザカリア様がうなずく。
 周囲も、当たり前だろうという雰囲気だった。
 普段なら、ここで、『王女を馬鹿にして! 牢屋にぶちこみなさい!』の流れのはずが、完全に流れを失ってしまった。
 しかも、追い付いてきた教師が、満面の笑みでルチアノを褒めだした。

「セレーネ様。ルチアノ様は、本当に賢くていらっしゃいますわ! 真面目に授業を聞くだけでなく、ご自分のしっかりとした考えをお持ちで、教えがいがございます」
「ありがとうございます。王子として問題なく育っているようで、安心いたしましたわ」

 セレーネの言葉に、教師はさらに張り切りだした。

「ロゼッテ様。ルチアノ様をお手本に、頑張りましょうね。さあ、勉強部屋へ戻りましょう」
「いやー! お勉強したくないのっ!」

 手足をバタバタさせ、床に寝転び、その場からロゼッテが動かなくなった。

「ロゼッテ。王女なら、みんなのお手本にならなきゃ駄目だよ。ロゼッテが綺麗なドレスを着れるのは、王女のお仕事をしているからなんだよ?」
「セレーネによく似て、お説教がお上手ですこと」
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