あなたの子ですが、内緒で育てます
 それを見たルチアノが、横からさっとロゼッテの手をとり、デルフィーナから引き離した。

「あっちに美味しそうなケーキがあったよ。ロゼッテ、ケーキが好きだよね? 一緒に食べよう」
「ちょっと! なれなれしいわよっ!」
 
 デルフィーナを無視し、ルチアノはロゼッテを連れていった。

「デルフィーナ。子供同士、遊ばせておけばいいだろう? ロゼッテは難しいことが、わかる子ではない」

 ルドヴィク様に言われ、さらにデルフィーナは苛立った様子を見せた。

「難しいことがわからない子だなんて、おっしゃらないでください! まるで、わたくしの子がセレーネの子に劣っているみたいじゃないですかっ!」
「実際、ルチアノは賢い。ロゼッテよりもな」

 ルドヴィク様の言葉に貴族たちは察した。

「次期国王はルチアノ様か」
「そうだと思っていたが、早かったな」

 そんな言葉が交わされる。
 長く続くと思っていたデルフィーナの権勢は、今、終わりを告げようとしていた。

「そんな……」

 これ以上、パーティーの雰囲気が悪くならないよう、ルドヴィク様は楽隊に命じた。
< 119 / 190 >

この作品をシェア

pagetop