あなたの子ですが、内緒で育てます
 ――これは罠だ。

 誰もがわかった。
 すでに用意されたお茶とお菓子、デルフィーナ付きの侍女たち。

「待て。お茶はこちらで用意する」

 ザカリア様はお菓子やお茶に、毒が入っていると判断したようだ。
 それは、きっと正しい。

「あら、ザカリア様。ロゼッテはいつもこちらでお菓子を召し上がっていたのよ。わたくしが用意したものを口にできないとでも、おっしゃるのかしら?」

 関係がこれ以上、悪くなってはと思っていたけど、ルチアノの身が危ないとなれば、話は別だ。
 断ろうとした瞬間。

「そんなことないよ。お母様、ザカリア様。お茶にしよう」

 ルチアノがにっこり微笑んで、承諾した。

「ロゼッテ。元気だった? ぼく、なかなか会えなかったから、心配してたんだよ」
「う、うん……。わたしも、ルチアノに会いたかった……」

 ロゼッテが目に涙を滲ませた。

「大丈夫だよ。ロゼッテ、泣かないで」

 テーブルがセッティングされ、席に着く。
 ルチアノの目はワゴンのお菓子に向き、その皿が並べられるのを見ていた。
 全員の皿が行き渡った時、ルチアノは言った。

「ぼくの皿とデルフィーナ様の皿を交換してほしいな」
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