あなたの子ですが、内緒で育てます
 もう答えを言ったも同然なのに、ザカリア様はさらに続けた。

「セレーネの気持ちを読んだ」
「わ、私の? 私の心をですか!?」
「俺を好きだと言っていた。正解か?」
「……正解です」

 心が読めるザカリア様に、嘘も隠し事もできない。

「ザカリア様を愛しています」

 素直に自分の気持ちを答えると、ザカリア様は私の髪をするりと手から逃がした。
 そして、ザカリア様は私の唇に口づけを落す――美しい夕暮れが王宮を染めた日、私は生涯を共にする人を手に入れたのだった。
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