あなたの子ですが、内緒で育てます
「私だけ、立派なドレスを着ていても、おかしいだけです」

 ザカリア様自身は、すでに平民と同じ服装をしている。
 きっと私に、粗末な服装をさせるのをためらったのだろう。

「私は、何もかも失いました。夫も、実家も、帰る場所もありません。だから、せめてお腹の子だけは守りたいのです」
「わかった」

 古着屋に寄り、ドレスを売る。
 そして、粗末な服に着替えた。
 鏡を見る――どうしても、腰まである長い銀髪は隠せなかった。

「ハサミを貸していただけませんか」

 店主の妻に頼むと、快くハサミを貸してくれた。
 そのハサミで、腰まであった長い銀髪を切った。

「お、奥様!? そんな美しい髪を切ってどうなさいます!」
「この銀髪を差し上げるわ。その代わり、私が店を訪れたことを秘密にしていただきたいの」

 銀髪は珍しく、かなり高い値で売れるはずだ。
 デルフィーナがばらまいている情報料よりも、高値で。

「あ、あの、こんな……よろしいのですか?」
「ええ。子供たちに美味しいパンを買ってあげて。髪しか差し上げられなくてごめんなさい」

 さっきの宿屋の夫婦を責められない。
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