あなたの子ですが、内緒で育てます
 貧しいから、少しでも生活費が欲しくて私を売ったのだ。
 なぜ、こんな貧しくなっているのだろう。
 私が閉じ込められている間に、デルフィーナがなにかしたとしか思えない。
 王都の物価の値は上がり、通りすがりに見た屋台の品物には、高い税金がかけられている。
 ルドヴィク様はなにをしていらっしゃるのか……

「お、王妃様……い、いえ、なんでもございません」

 やはり、気づいていたようだ。
 古着屋の妻は目に涙を浮かべ、うやうやしく、両手で銀髪を受け取った。

「最近では、なにもかもが高くて、以前のような暮らしができないのです。それに、セレーネ様がされていた慈善事業もすべて止められて、教会の前にはお腹を空かせた者たちが並んでおります」
「そう……。なんとかできるよう、私もなにか考えますから、もう少しだけ頑張ってくださいね」

 子供がたくさんいて、将来が不安なのだろう。

 ――せめて炊き出しだけでも復活させなくては。

 着替えを終え、ザカリア様の元へ戻ると、私の髪を見たザカリア様が、目を見開いた。

「髪が……」
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