あなたの子ですが、内緒で育てます
 兵士たちは黙り込んだ。
 デルフィーナは嬉しそうに笑った。

「そうね。セレーネを助ける人なんていないわ。ザカリア様の元にいないのなら、道に倒れて野垂れ死んでいることでしょうね。なんて憐れなのかしら」

 兵士たちは、デルフィーナを蔑んだ目で見ている。
 だが、浮かれているデルフィーナは気づいていなかった。

「下がれ。もういい」

 兵士たちは不満そうな面持ちをしたまま、去って行った。
 セレーネがザカリアのところにいない――それを知れただけで満足だった。

『セレーネが王宮に戻ることはない』

 俺もデルフィーナも、そう思っていた。
 この時は――
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