あなたの子ですが、内緒で育てます
 デルフィーナはげんなりした顔をした。
 
「情報はもうたくさんよ。偽情報ばかり集まっただけだったわ! お金欲しさに、嘘ばかり! 卑しい民が多すぎなのよ!」
「民は貧しいので、お金を必要としています」
「デルフィーナ王妃。民は苦しんでおります。セレーネ様が王妃でいらっしゃった時のように、慈善事業をなさり、民に目を向けていただきたい」

 デルフィーナは、セレーネと比べられたと思ったのか、兵士たちを鋭い目で睨みつけた。

「わたくしに、セレーネの真似をしろと?」
「そうではなく、昨年の不作で、民は飢えております」
「追い詰められ、犯罪に手を染める者が多くなっているのです」

 デルフィーナに言っても無駄だと判断したのか『陛下』と、兵士は俺にすがった。

「大臣たちに頼め。いいようにしてくれるだろう」

 兵士たちの顔に失望の色が浮かぶ。
 ザカリア様なら、と誰かが言ったような気がした。

 ――目障りな弟だ。

「国王陛下、セレーネ様の捜索はどうなさいますか」
「ああ、もう必要はない」
「ですが、セレーネ様は侯爵家にも帰れず、行き場がないでしょう。もしかすると、どこかで自害を……」
「それなら、それでいいと言っている」
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