私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
26 恋の行方
私がイタリアンレストランで食事をして以来、笙司さんは姿を見せなかった。
その代わり、よくやって来るようになったのは知久で、ディナータイムが終わる間際の時間に顔を出す。
仕事帰りの時もあるし、休みの日の時もある。
そして、他愛のない話をする。
「唯冬と千愛ちゃん、同棲したらしいよ。俺達も一緒に暮らそうか」
前言撤回。
他愛のない話だけではなかったわね……
なにも答えず苦笑だけを返した。
知久は笑顔で私を見上げている。
「ラストオーダーよ」
「じゃあ、小百里で」
髪をひと房つかむとキスをした。
「いちいち色気をふりまかないと、気が済まないのかしら」
「もしかして俺の色気にあてられた?」
「毒気の間違いでしょ」