私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】

26 恋の行方


私がイタリアンレストランで食事をして以来、笙司(そうじ)さんは姿を見せなかった。
その代わり、よくやって来るようになったのは知久(ともひさ)で、ディナータイムが終わる間際の時間に顔を出す。
仕事帰りの時もあるし、休みの日の時もある。
そして、他愛のない話をする。

唯冬(ゆいと)千愛(ちさ)ちゃん、同棲したらしいよ。俺達も一緒に暮らそうか」

前言撤回。
他愛のない話だけではなかったわね……
なにも答えず苦笑だけを返した。
知久は笑顔で私を見上げている。

「ラストオーダーよ」

「じゃあ、小百里で」

髪をひと房つかむとキスをした。

「いちいち色気をふりまかないと、気が済まないのかしら」

「もしかして俺の色気にあてられた?」

「毒気の間違いでしょ」

< 121 / 172 >

この作品をシェア

pagetop