私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
でも、その表情は明るく幸せそうでホッとした。
「唯冬は強いわね」
「俺の方が(辛抱)強いよ」
「えーと、お二人さん。そろそろ閉店作業したいんだけど、いいかな?」
キッチンから穂風が顔を出して知久に言うと両手をあげた。
「俺の周りにはライバルばかりで大変だな」
「知久君が強いなら、ライバルくらいなんでもないんじゃない?」
穂風は聞いていたらしく、知久をからかった。
「俺の一番強力なライバルは穂風さんだな」
「それは光栄。はい。これ、結朱さんにあげて」
穂風が差し出したのはクルミと紅茶のシフォンケーキだった。
「結朱が紅茶を好きだって知ってたんだ?」
「小百里がね」
「そっか。ありがとう。あいつ、喜ぶよ」
きっと結朱さんはもうわかっている。
自分のところに唯冬の心がないことを。
「唯冬のことを諦めるために自分のライバルは最強だって思いたいんだよ、あいつ」
「ええ、そうね」
結朱さんは努力型の天才で、地道に実績を積み重ねてピアニストになった。
本当は真面目な子で、嫌がらせをしてしまった自分のことを悔やんでいるし、恥ずかしいと思っているはずだ。
私が渋木の家に来た時も、彼女だけは悪口を一切言わず、軽蔑するような目で周りの大人を見ていたのを覚えている。
「唯冬は強いわね」
「俺の方が(辛抱)強いよ」
「えーと、お二人さん。そろそろ閉店作業したいんだけど、いいかな?」
キッチンから穂風が顔を出して知久に言うと両手をあげた。
「俺の周りにはライバルばかりで大変だな」
「知久君が強いなら、ライバルくらいなんでもないんじゃない?」
穂風は聞いていたらしく、知久をからかった。
「俺の一番強力なライバルは穂風さんだな」
「それは光栄。はい。これ、結朱さんにあげて」
穂風が差し出したのはクルミと紅茶のシフォンケーキだった。
「結朱が紅茶を好きだって知ってたんだ?」
「小百里がね」
「そっか。ありがとう。あいつ、喜ぶよ」
きっと結朱さんはもうわかっている。
自分のところに唯冬の心がないことを。
「唯冬のことを諦めるために自分のライバルは最強だって思いたいんだよ、あいつ」
「ええ、そうね」
結朱さんは努力型の天才で、地道に実績を積み重ねてピアニストになった。
本当は真面目な子で、嫌がらせをしてしまった自分のことを悔やんでいるし、恥ずかしいと思っているはずだ。
私が渋木の家に来た時も、彼女だけは悪口を一切言わず、軽蔑するような目で周りの大人を見ていたのを覚えている。