私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
父はすばやく席から立ちあがり、やってきた知久の父親と握手した。
これで、陣川と渋木は仲直りできたというように。

「私のお見合い相手って陣川の家だったの!?」

「そうだ。陣川家から唯冬の代わりに知久君と小百里を結婚させてはどうかと、打診があった」

知久のほうを見るとにっこり微笑んでいたけれど、それは驚いて言葉が出ない私を可笑しそうに笑っているようにしか見えない。

「唯冬のことで仲が冷えた両家を俺と小百里さんが結婚することで仲を修復できたら、陣川としても喜ばしいことですからね」

知久はいつになくおとなびた口調で言った。

「もちろんだ。本当に陣川家には息子が申し訳ないことをした」

結朱(ゆじゅ)さんも傷ついていることでしょう。ごめんなさい」

清加さんが頭を下げるのを見て、このために清加さんがやってきたのだとわかった。

「さっきもめていたようだったが、なにか問題でもあったかね? こちらとしては唯冬君の時のようにまたやめますと言われるのも困る」

「いやいや。結婚したくないと言っていたんですよ。働かなくてもいいようにビルを与えたんですが、娘はカフェやピアノ講師をやっているでしょう。働くのが楽しいようで」

< 143 / 172 >

この作品をシェア

pagetop