私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「ああ、なるほど。それならまあ、知久の奴もこのとおり一年くらいは仕事が詰まっているし、結婚式は来年でも構いませんよ」

「ははは、さすが知久君。売れっ子ですな」

父同士、楽しそうに話している。
それを安心したように清加さんは眺めていた。
陣川家と渋木家はビジネスパートナーでもあり、関係が冷えた状態はお互い不利益しかなかった。
最近は株価にまで影響しつつあった。
それは知っていたけど―――知久と目があった。

「これからよろしく、小百里さん」

「こちらこそ」

本当に私達は嘘つき。
私達は微笑み合って嘘をつく。
後で覚えておきなさいよと知久を軽くにらむと苦笑していた。
黙っておいて、私を驚かせようと思っていたのは間違いないのだから。

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