私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
31 たくらみ
お見合いが終わり、解散となったけれど、父同士は久しぶりに話をしたからか、これからまた他の店に行くと言って、いなくなってしまった。
結局、昔からの付き合いで仲がいい二人だから、どうすれば、仲直りできるか考えていたに違いない。
「小百里さん。唯冬のことで、あなたを振り回してしまってごめんなさい」
清加さんは申し訳なさそうに私に頭を下げた。
「いいえ。清加さんは悪くありませんから」
私はなんとなく、察していた。
これを企んだのは唯冬と知久なんじゃないかって。
清加さんは迎えに来た渋木の運転手に荷物を手渡していた。
帰ってから柊冴と食べるのか、ホテルのティールームのケーキをテイクアウトしていた。
ケーキは柊冴が好きなモンブランだった。
「清加さん。私は唯冬のことも柊冴のことも大事な弟だと思っています。二人だけじゃなく、清加さんにも幸せになってほしいと思ってます。だから、謝らないでください」
清加さんは泣きそうな顔をした。
「私……、気づいていたのよ。小百里さんが笙司さんとの婚約を望んでいないことに。でも高窪のお義姉様に逆らえなくて……」
清加さんの気持ちは痛いほど、わかっていた。
傷つけられたのは私だけじゃなく、清加さんも同じ。
可哀想だとずっと言われ、唯冬と私を比べられ、高窪の伯母達から追い詰められてきたのは清加さんなのだから。
「新しい婚約者が知久さんでよかったと思っているの。きっと小百里さんを大切にしてくれるはずよ」
「ええ」
清加さんがケーキを買っていたのは三つ。
父の好きなショートケーキも入っていた。
ケーキの箱だけは運転手に預けず、自分の手に持ち、大切そうに抱えて渋木の運転手と一緒に帰っていった。
その場に残ったのは私と知久だけ。
「知久」