私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「長かった。俺と小百里の婚約は唯冬と結朱の婚約があるかぎり、絶対にあり得ない話だった」
知久が息を吐き、私の髪に触れ、顔を上げる。
その泣きそうな顔を見て私は気がついた。
すべて知久が仕組んで動かしていたのだということに。
毬衣さんとの婚約も唯冬の婚約解消も全部―――知久が盤上を支配していたということだ。
女王の駒を手に入れるため、ひとつずつ知久は問題をクリアして、敵を追い詰めていった。
だから、私は知久の頬を両手で覆って応えた。
「どんな魔術を使ったの?」
知久はいつもの顔に戻って、にこっと笑った。
「種明かしをしてあげたいけど、ここだと目立ち過ぎて困る」
ホテルのティールーム前には人が集まりだしていて、知久が有名人だったということに気づいた。
どこかで見たことがある顔だとか、かっこいい人とか耳に入ってきて我に返った。
私としたことが、気が緩んでいたとしか思えない。
こんなところでイチャイチャするなんて―――
「失敗したわ……」
「失敗じゃないよ」
知久は笑って私の額にキスをして、集まっていた人達に蠱惑的な目を向けた。
悪魔はそうやって、人を誘惑する。
顔を赤くして、目をそらす人達に知久は手を振った。
知久が息を吐き、私の髪に触れ、顔を上げる。
その泣きそうな顔を見て私は気がついた。
すべて知久が仕組んで動かしていたのだということに。
毬衣さんとの婚約も唯冬の婚約解消も全部―――知久が盤上を支配していたということだ。
女王の駒を手に入れるため、ひとつずつ知久は問題をクリアして、敵を追い詰めていった。
だから、私は知久の頬を両手で覆って応えた。
「どんな魔術を使ったの?」
知久はいつもの顔に戻って、にこっと笑った。
「種明かしをしてあげたいけど、ここだと目立ち過ぎて困る」
ホテルのティールーム前には人が集まりだしていて、知久が有名人だったということに気づいた。
どこかで見たことがある顔だとか、かっこいい人とか耳に入ってきて我に返った。
私としたことが、気が緩んでいたとしか思えない。
こんなところでイチャイチャするなんて―――
「失敗したわ……」
「失敗じゃないよ」
知久は笑って私の額にキスをして、集まっていた人達に蠱惑的な目を向けた。
悪魔はそうやって、人を誘惑する。
顔を赤くして、目をそらす人達に知久は手を振った。