私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】

33 恋と復讐【知久】

俺が正しく彼女を手に入れようと考え、決めたのは早いうちだったと思う。
すべては高窪(たかくぼ)毬衣(まりえ)と婚約したところから始まっていた。
それはすべて小百里(さゆり)を手に入れるためだと誰が気づいただろう。
兄の部屋には夜の女王のアリアが流れていた。
華やかな高音の声はどこかバイオリンの音色に似ている。
高校三年の秋。
俺は兄に自分の白紙の進路希望調査を差し出した。

「どうした?」

「兄さん。頼みがあるんだ」

オペラが好きな兄は両親よりも、俺の音楽に理解を示してくれている。
ただ、音楽に理解を示していると言っても俺の結婚相手となると別だ。
陣川(じんかわ)の家と対等か、それ以上の家が望ましいと父も兄も考えている。
俺が学生だからといってそれが免罪符になるわけじゃない。
陣川の息子なら、わかっていることだろうとあえて言わないだけなのだ。

「頼みか。お前が追いかけている彼女のことか?」

「やっぱり兄さんにはバレてたか」

「当たり前だ。お前はうまく隠しているようだが、目は嘘をつけない」

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