私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
番外編

策士なふたりは 【知久視点】

 コンサートの打ち合わせが終わり、マネージャーの 宰田(さいだ)が車の中で明日のスケジュールを確認する。
 宰田は人が良さそうな顔をしているが、なかなかの敏腕マネージャーでマイペースな 逢生(あお)や神経質な唯冬《ゆいと》のこともうまく調整する。
 いわば、人間の調律師。
 いや……もしかしたら、俺達を操る黒子にして人形使いか?
 つまり、こいつがすべての黒幕!! 

「知久さん、なんですか? その顔は」
「べっつにー」 
「また良からぬことを考えていたんでしょう」

 スケジュールを告げると、後は涼しい顔で車のハンドルを握って運転する。 
女遊びをしたことありませんという顔で宰田の奴は乱れ一つない髪とスーツ、つまり俺と見た目は真逆ってわけ。
 こういう清廉潔白そうな顔をしている奴が一番タチが悪かったりするんだよな……
 鈍感でサラッと女を泣かすタイプだ。

「言いたいことがあるなら、言っていいですよ」
「ないない」

 俺は笑ってかわしておいた。
 下手なことを言って、その仕返しに面倒な仕事を入れられたら困る。
 今の俺は小百里との新婚(まだ結婚していないけどさ)生活、真っ只中だからね。

「小百里さんと婚約したそうですが、女性関係はきちんと清算したんですよね」
「人聞きが悪い。俺は小百里一筋だ」
「それなら、構いません。唯冬さんと一緒に仕事をしているんですからね。気まずくなるようなことはやめてくださいよ」
「宰田は俺を誤解してるって。俺はすっごい一途な男だよ?」
「この間、雑誌でモデルの仕事しましたよね。その時、何人のモデルから名刺もらいました?」

 こいつ、しっかり見ていやがる……!
 俺はやれやれとため息をついた。

「全員からもらったよ。平等にね」
「焼却してください。今すぐに」
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