私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
俺は宰田が運転する車を降りた。カフェ『音の葉』前、店のクローズ作業を終えた小百里が戸締りをしているのが外から見える。
ピアノをじっと見つめ、一曲弾こうかどうしようか悩んでからピアノの蓋を閉じたのがわかった。
それは、俺と目が合ったからだ。
俺が帰って来たことを知らなかったら、小百里は一曲弾いていたかもしれない。
「ただいま、小百里」
「お帰りなさい」
店に入ったなり、ふわりと甘いバニラの香りがしたと思ったら、キッチン担当の 穂風さんが作った焼き立てのビスコッティがカウンターの上に冷まされていたからだった。
「それ、コーヒーのサービスに付けるお菓子?」
「ええ。冷めたら片付けようと思っていたのよ。お腹空いたでしょ? 上に夕食を用意してあるから、先に食べていて」
「小百里と一緒に食べたいな」
小百里の長い髪を指に絡め、上目遣いでキスをする。頬を赤らめることなく、小百里の冷静な態度は唯冬が俺に見せる『真面目にやれよ』という顔を思い出させた。
こういうところが姉弟なんだよなぁ……
渋々、指を髪から離すと小百里はビスコッティをガラス瓶へと入れていく。
「知久。ひとつ食べる?」
「もちろん」
ピアノをじっと見つめ、一曲弾こうかどうしようか悩んでからピアノの蓋を閉じたのがわかった。
それは、俺と目が合ったからだ。
俺が帰って来たことを知らなかったら、小百里は一曲弾いていたかもしれない。
「ただいま、小百里」
「お帰りなさい」
店に入ったなり、ふわりと甘いバニラの香りがしたと思ったら、キッチン担当の 穂風さんが作った焼き立てのビスコッティがカウンターの上に冷まされていたからだった。
「それ、コーヒーのサービスに付けるお菓子?」
「ええ。冷めたら片付けようと思っていたのよ。お腹空いたでしょ? 上に夕食を用意してあるから、先に食べていて」
「小百里と一緒に食べたいな」
小百里の長い髪を指に絡め、上目遣いでキスをする。頬を赤らめることなく、小百里の冷静な態度は唯冬が俺に見せる『真面目にやれよ』という顔を思い出させた。
こういうところが姉弟なんだよなぁ……
渋々、指を髪から離すと小百里はビスコッティをガラス瓶へと入れていく。
「知久。ひとつ食べる?」
「もちろん」