私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
知ってるなら言うなよ。
そう思っていると、さっきの女性奏者達は逢生に狙いを定め近寄るのが見えた。
まるでアフリカのライオンが獲物を狩る時のようだ。
「あの……」
話しかけた瞬間、逢生が椅子から立ち上がり、どこへ行くのかその場から姿を消した。
さしずめ、ライオンの狩りに気がついたシマウマだな。
まったく―――
「どっちもどっちね」
一部始終を眺めていたらしい結朱が現れた。
オーケストラのリハのため、大勢がいる中でも結朱は目立っていた。知久の妹だけあって華やかな顔立ちをしている。それと、最近、海外のコンクールで賞を取って自信がついたせいか、以前より堂々としている。
知久がうまく女性奏者達にフォローをしているのを結朱は複雑そうな顔で眺めていた。
天才と呼ばれる兄に対するコンプレックスも多少はあるのだろう。
「私が唯冬さんを好きになった理由を言ってもいいかしら?」
「どうぞ」
チューニングをしている楽器の音が混ざる中、結朱の悲しそうに笑った声はすぐに書き消された。
「憎たらしいわね。私の気持ちを聞いても自分の気持ちが動かない自信があるっていうこと?」
「もちろん」
結朱は呆れたように俺を見る。
そう思っていると、さっきの女性奏者達は逢生に狙いを定め近寄るのが見えた。
まるでアフリカのライオンが獲物を狩る時のようだ。
「あの……」
話しかけた瞬間、逢生が椅子から立ち上がり、どこへ行くのかその場から姿を消した。
さしずめ、ライオンの狩りに気がついたシマウマだな。
まったく―――
「どっちもどっちね」
一部始終を眺めていたらしい結朱が現れた。
オーケストラのリハのため、大勢がいる中でも結朱は目立っていた。知久の妹だけあって華やかな顔立ちをしている。それと、最近、海外のコンクールで賞を取って自信がついたせいか、以前より堂々としている。
知久がうまく女性奏者達にフォローをしているのを結朱は複雑そうな顔で眺めていた。
天才と呼ばれる兄に対するコンプレックスも多少はあるのだろう。
「私が唯冬さんを好きになった理由を言ってもいいかしら?」
「どうぞ」
チューニングをしている楽器の音が混ざる中、結朱の悲しそうに笑った声はすぐに書き消された。
「憎たらしいわね。私の気持ちを聞いても自分の気持ちが動かない自信があるっていうこと?」
「もちろん」
結朱は呆れたように俺を見る。