私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「早く終わったから、奏花(そよか)にプリンを買って帰る」
「いいねー。俺も小百里になにか買っていこうかな」

 知久はうーんとなにか考え出したのを俺はすばやく止めた。

「薔薇の花はいらないと思うぞ」
「えっー! 俺の情熱を表現した赤い薔薇なのに?」
「花束もやめろよ。だいたい普通の時に花束を贈ってどうする。祝い事がある時はなにをプレゼントするんだよ」
「これだから唯冬は。なにも特別だから花を贈るんじゃない。愛を語るために花を贈るんだよ」

 だめだ、こいつ。
 放っておこうと決めた。
 小百里は偉大だ。
 こんなワケのわからない男に付きまとわれ、あしらうことができるんだからな。
 
「唯冬。俺の真似をしたいなら、参考にしてもいいよ? いい花屋を紹介しようか?」
「断る」
「デパ地下のプリンは……」
「すでに冷蔵庫に入っている」

 知久と逢生はつまらないという顔をしていたが、少なくともこの二人より俺のほうがまともだと思っている。

「相手に迷惑にならないよう、ほどほどにしておけよ」

 手のかかる二人に忠告し、ひらひらと手を振った。
 この二人と別れると、ようやく俺は今日一日の仕事を終えたという気分になる。
 帰り道に和食専門店に立ち寄った。
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