私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
 毎年、バッグやアクセサリーという無難なプレゼントにしてきた俺だけど、今年の俺は違う。
 気合いが入っている俺はこくっと首を縦に振る。
 もちろん、ここに来るまでに二人に助言はもらった。
 ケーキ屋にもいろいろ種類があるんだからなと唯冬(ゆいと)が俺に心配そうに説明してくれたけど、結局、よくわからなかった。ケーキ屋はケーキ屋じゃないのだろうか。
 知久はついて行こうかと言ってくれた。けれど、それでは意味がないと断った。
 一人でこれくらいやってみせる。
 そして、俺がいかに自立した男であるかを見せたかった。
 
奏花(そよか)と結婚したい」

 思わず、心の声が口から出てしまった。
 そろそろ籍をいれようとプロポーズしたのに奏花は俺を冷めた目で見てきた。
『結婚? そうね。寝坊せずに一人で起きれて仕事行けたらね。いい加減、あの二人に迷惑をかけないで自立した人間になりなさいよ』
 そんなことを奏花は言うけど、俺達の関係は結構、ギブアンドテイクだと思う。
 あの二人の目的のために俺は騙された被害者でもある。
 音楽事務所に所属してチェロを演奏するだけと聞かされ、承諾したのにまさかのアイドルデビュー。
 そして、まさかの留学でイン・ドイツ。
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